百日咳
子どもの長引く咳と再感染の予防
「咳が3週間以上続いている」「夜になると咳き込んで眠れない」――そんなとき、風邪と見過ごされがちなのが百日咳です。
この記事では、百日咳の特徴・検査・治療・再感染のリスクとワクチンの現状を解説します。

百日咳とは?
百日咳はボルデテラ・パータシスという細菌によって起こる感染力の強い呼吸器感染症です。
初期は風邪のような症状で始まり、次第に激しい咳が数週間以上続くようになります。
主な症状
夜間に強くなる連続的な咳 |
---|
咳き込んだあとに「ヒュー」と息を吸う音 |
咳で嘔吐したり、顔が赤紫になることも |
発熱はあまり見られません |
乳児では無呼吸やチアノーゼが起こることもあり、早期発見と診断が重要です。
百日咳ワクチンと日本の現状
現在日本では、乳幼児期にDPT-IPV(四種混合)またはヒブを含む五種混合ワクチンを生後2ヶ月から1歳半ごろまでに接種します。
その後、11歳でDT(ジフテリア・破傷風)のみの追加接種が行われますが、百日咳に対する追加接種(Tdap)は実施されていません。
このため、小学生高学年〜中学生になると百日咳の免疫が自然に低下し、再感染が起こりやすい状況になります。
また、大人が軽症で気づかずに子どもにうつす例もあり、家族内感染にも注意が必要です。
検査方法
当院では15項目同時PCRで正確に診断
百日咳は風邪との見分けが難しく、見逃されやすい病気です。
当院では抗原迅速検査ではなく、15種類のウイルス・細菌を一括で調べる多項目同時PCR検査を導入しています。
PCR検査の特徴
鼻ぬぐい液で検体採取(痛みは最小限) |
---|
マイコプラズマ・百日咳・RSウイルスなど15種類を同時検出 |
高精度・高信頼性で原因を特定 |
治療と最近の注意点
通常はマクロライド系抗生剤(クラリスロマイシン等)が使われますが、近年は薬剤耐性の百日咳菌株も報告されています。
そのため、抗生剤が効きにくい場合や再発例では、薬の変更や再検査が必要になることもあります。
家庭でできるケアと声かけ
咳が強いときは上体を少し起こして寝かせる |
---|
加湿と水分補給をこまめに |
「咳がつらいね」「がんばってるね」と認める声かけ |
咳が長く続くと「また咳?」「大げさじゃない?」と否定したくなる気持ちも湧いてきますが、お子さんが「伝えても大丈夫」と思える関係が、いちばんの安心につながります。
受診の目安
- 咳が2週間以上続いている
- 夜眠れないほどの咳がある
- 咳で吐く、顔色が悪くなる
- 乳児で無呼吸・チアノーゼが見られる
登園・登校の目安
よくある質問
Q. 百日咳は何度もうつるのですか?
A. はい。
ワクチンの免疫は年齢とともに低下するため、特に小学生以降では再感染のリスクがあります。
Q. 大人もうつりますか?
A. うつります。
大人は軽症で済むことが多いため、気づかずに子どもに感染させてしまうことがあります。
Q. 日本では百日咳の追加ワクチンは打てますか?
A.定期接種ではありませんが、任意接種(DPTワクチン)として接種することは可能です。
ご希望があればご相談ください。
当院では、発熱外来・思春期外来・発達外来も行っています。
心理面のご不安にも、臨床心理士と連携しながら対応しています。