感覚鈍麻
(感覚低登録・鈍感)
痛みや寒さに気づきにくい、呼んでも反応が遅い――
こうした感覚鈍麻(Sensory Hyposensitivity / Low Registration)は、ASD・ADHD など神経発達症のお子さんにみられることがあります。
刺激に気づきにくいことで学習や安全面に影響するため、適度な刺激提供と環境調整が重要です。

医学的背景
Dunn モデルにおける低登録
脳の視床‐感覚野ネットワークの反応閾値が高く、刺激が脳に届きにくい状態と考えられています。
その結果、動きがゆっくり・ぼーっと見える一方、強い刺激を求める探求行動(ジャンプ・衝動的な体当たり)が出ることもあります。
年齢別によく見られるサイン
乳幼児: 転んでも泣かない、オムツが濡れても不快を訴えない |
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就学前: 大声を出さないと反応しない、食べこぼしに気づかない |
小学生: 授業中ぼーっとしがち、筆圧が弱く文字が薄い |
思春期: 運動時に怪我が多い、眠気を感じにくく夜更かし |
評価・診断の流れ
医師初診: 生活影響と安全面評価 |
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Sensory Profile 2/AASP: 低登録・探求スコア確認 |
OT 観察: バランス・筋力・重力不安をチェック |
併存症スクリーニング: ADHD、DCD、睡眠障害 |
家庭・学校でできる5つのサポート
強調視覚刺激: カラーテープ・蛍光ペンで教材を強調表示 |
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重み・深圧入力: 加重ブランケットやセラピーボールで proprioceptive input |
身体を動かす“重い仕事”: 雑巾がけ、荷物運びで感覚を覚醒 |
タイマー&アラーム: 内的感覚に代わり外的合図を使用 |
怪我・危険サインの教育: 鏡で傷を確認し手当てを学ぶ |
専門的アプローチ
感覚統合療法(SI): OT によるブランコ・スイング・プラットフォームで覚醒レベル調整 |
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リズム運動: トランポリン・跳躍で前庭覚への強刺激 |
筋力トレーニング: 体幹強化で重さや位置感覚を高める |
薬物療法: 二次的な不注意・眠気に対し ADHD 薬やメラトニンを検討 |
学校への合理的配慮例
席を前列や窓際から離れた静かな場所に |
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口頭指示+大きめの図や写真で視覚支援 |
授業前に5分のストレッチ休憩で覚醒を促す |
重いドア開け係や配布物係でproprioceptive input |
赤信号サインと受診目安
痛みに気づかず怪我が頻発 |
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眠気に気づかず日中居眠り |
授業や遊びで刺激追求行動が危険レベル |
成長曲線の停滞(満腹感低下による過食/小食) |
当院からのメッセージ
感覚鈍麻は“気づきにくい困りごと”。
安全と学びを支えるために、刺激を“届ける”環境づくりが大切です。
気になるサインがあれば、お気軽にご相談ください。
よくあるご質問
Q. スポーツをさせたほうが良い?
A. 安全管理を徹底したうえで、体幹や筋力を使う運動は覚醒を促し有益です。
Q. 無理に刺激を与えるとパニックに?
A. 過敏でない限りパニックは少ないですが、段階的に強さを調整します。
Q. 大人になっても治らない?
A. 感覚の特性は続きますが、対処スキルと筋力強化で生活しやすくなります。
Q. みよし市からも利用できますか?
A. はい、みよし市から車で約20分、駐車場完備です。
【この記事の監修・執筆】
アイキッズクリニック
院長 会津 研二(小児科専門医)
新生児・発達・思春期の診療に長年携わり、
多くのお子さんの成長と自立を見守ってきました。
ご家庭や集団生活でも穏やかに過ごせるよう、
アドバイスや治療をご提案しています。
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